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国税局課税第二部の料調二課の調査は、どのように調査を行いますか?
東京国税局課税第二部の料調二課は、売上金額が40~50億円に上る法人の調査を担っています。五つの班が編成されていて、班ごとに実査官5~6人が配属されています。約1週間かけて法人の調査を行います。
料調二課が担うのは、料調一課が担当する法人に比べると小規模である法人の調査です。規模が小さいとはいえ、売上金額が40~50億円に上る法人ですので、結構大きい会社だということもできます。
料調二課では五つの班が編成されていて、班ごとに5~6人ほどの実査官が配属されています。それらの班は、担当する地域を持つ班と、地域横断的に動く班に区分されているようです。
続いて、料調二課が実際にいかにして調査をするのかを説明します。
簡単にいうと、料調一課と同様ですが、料調の実査官のほかに、その班が担当する地域に位置する税務署の調査官も一緒に、当該地域に位置する法人の調査を行います。調査を合同で行うのには、税務署の調査官に対して調査手法の指導をする意味もあるといわれています。
通常の調査期間は、1週間です。そのような短い間に着手からまとめまでを行いますから、料調一課と同じように、準備調査に十分な時間をかけます。
そして、準備調査に時間をかけることよりも重要なのは、調査する事案の選定だといえるでしょう。各税務署の法人課税部門と緊密な協議・打ち合わせを行い、本当に調査すべきである事案を選定します。近年の売上の伸びが急激な法人、そのわりには所得水準の低い法人、インターネット事業等新しい事業形態の法人、介護・老人医療等時代を表象する事業形態の法人に着眼します。
次に、勘定科目を緻密に分析し、各種資料情報の検討を行い、実際に着手したときのことを何度もシミュレーションします。
この後は、着手です。法人に調査日程等の事前通知を行わずに着手するのが通常です。ただし、平成22年度税制改正大綱によると、納税者権利憲章(仮称)が定められ、税務調査のあり方等の見直しをする方向で、検討が行われています。
国税局課税第二部の料調一課は、どのように調査を行いますか?
東京国税局課税第二部の料調一課が調査に着手するに当たっては、予告なく行われるのが原則です。30人ほどの体制により、法人の本社・支店・工場・営業所・代表者自宅のみならず、取引銀行にも同時に着手する場合があります。
本社には規模にもよるものの7~10人ほどの実査官が午前9時前には集合していて、着手予定の支店工場等にも幾人かの実査官が張り付いています。事案の担当主査は各地に分かれている実査官と連絡を取りつつ、9時になったら各地で同時に調査に着手することになります。
なぜ代表者の自宅にも臨場するのというと、代表者が在宅しているかもしれないからです。つまり、代表者にできるだけ早く接触し、調査に着手する旨を知らせ、調査を行うことについての承諾を得なければならないためです。臨場するのは、家捜しするためではありません。
着手したら、それぞれの現場において実査官が、法人の経理部や営業部等の各々の責任者から常日頃行っている業務内容に関する聞き取り調査をします。これを、概況の聞き取り調査といいます。
概況聞き取りが終わると、代表者の承諾を得た上で、事務室内の現物確認調査を行います。キャビネット内の普段の業務関係資料、金庫内の現金、重要書類、机の中の書類、印鑑等の検査を実施します。かつて、現物確認の途中で、社員が書類を持ったまま逃走しようとしたことや、代表者が突如として書類を破り始めたことがありました。こうしたことがあったら、どれが重要書類であるかが即座に判明しますから、調査する側には都合がいいことでしたが、最近はこのような話を聞かなくなりました。
このようにして収集を終えた書類をその場で読むことはなく、全てを会議室等の別室に運んで、実査官が読み込みを行います。これは、物読み(ぶつよみ)といわれます。こうした物読みによって、経理操作を示唆するメモや表向きの経理書類を作成する前段階の真実を記した書類等が発覚する場合があります。このように不正計算の端緒が明らかになって、その後、全体的にはっきりし、修正申告をすることとなります。
真実を記した書類等を破棄したら、不正が暴かれることはないだろうと考えてはいけません。社員の中には、保身と責任逃れを目的に会社内にそのような不正書類を保管している人が必ずいるものです。そして、そこから暴かれていきます。
調査期間に関しては、1週間ほどで現物確認調査・物読みをして、翌週には人数を縮小した上で問題点をまとめて、修正が必要である項目を指摘し、説明し、代表者の理解・納得を得た段階で、修正申告書の提出を促します。
社長であるあなたが、当局から修正申告すべきである項目を指摘されたとしたら、どのような思いを抱くでしょうか。予想しなかったような問題点を提示される場合もあるでしょう。面倒であることを理由に棚卸資産の計上を社員が適当に行っていませんでしたか。回収可能な売掛金を貸倒処理していませんでしたか。営業部が当期の売上の予算を達成してしまったことを理由に当期に計上するはずの売上を故意に翌期に繰り延べていませんでしたか。
税金をごまかそうというような思いを社長が抱いていなくても、会社内で経理処理が適切になされていないケースはしばしばあります。税務調査で会社の経理処理の不備を指摘されることはよくあります。会社内の経理・業務の見直しを図るいい機会であると、税務調査を前向きに捉えましょう。これが、税務調査の正しく上手な受け方だといえます。
国税局はどのようなところなのかについて教えてください。
東京国税局を例に取ると、税務調査を担うセクションは、課税部、調査部、査察部です。各部は数課に分かれ、各課は事務を分担して、法令で定められた調査事務をします。課税部は個人及び資本金が1億円未満の法人、公益法人等の調査を担い、調査部は資本金が1億円以上の法人の調査を担い、査察部は国税犯則取締法により個人、法人を問わずいわゆる脱税事件の調査を担います。
これらの部の中で、課税部の各課の所掌事務をみてみましょう。
東京国税局を例に取ると、課税部には課税第一部と課税第二部があります。
課税第一部には、課税総括課、審理課、個人課税課、資産課税課、機動課、資料調査第一課、資料調査第二課、資料調査第三課、資料調査第四課、国税訴務官室が設けられています。また、課税第二部には、法人課税課、消費税課、資料調査第一課、資料調査第ニ課、資料調査第三課、酒税課、鑑定官室が設けられています。
これらの課の中で、資料調査各課と機動課は、もっぱら税務調査を担います。
課税総括課は、課税部各課が担う事務の総合調整的な役割を担当します。つまり、法人税や所得税等の調査事務の基本的な運営方針の企画及び立案に関わること、これらに係る資料情報についての事務の管理に関することを担います。また、これに関わる事務で、国税局長の特命事項に関する事柄の指導及び監督並びにこれに必要な調査及び検査に関する、簡単にいえば、大規模法人・大口個人の調査の指導監督を担います。指導監督という言葉が意味するのは、税務調査をして納税者に適正な申告を促し、納税者全体の申告水準の向上を図ることです。
1.課税第一部
次に、課税第一部の資料調査各課が担う事務を説明します。
(1)資料調査第一課
規模が大きいこと等から税務署による調査が困難な所得税の事案についての調査を担います。つまり、富裕な個人の税務調査をもっぱら担います。また、いわゆる有名人の所得税の調査も担います。経済界のほか、世の中で有名人といわれる各界の有名人について調査します。
確定申告の相談会場等において、相談に訪れた納税者の方が税務職員に「私たちのような貧乏人からではなく、テレビに出ているような有名人から税金を取れ」等と発言している光景をよく見ますが、当局は有名人についても行っています。
(2)資料調査第二課
規模が大きいこと等から税務署による調査が困難な相続税の事案についての調査を担います。申告内容が複雑で金額も巨額といえる相続税や譲渡所得税の調査を担います。ただし、調査に立ち会った経験からいえることは、巨額でも土地や分かりやすい金融資産の相続税事案は、もっぱら所轄の税務署が担うということです。資料調査第二課は、相続財産が同族会社の株式であるような事案、名義株(株主の名義を借りた所有者が別にいる株式)と推測できるものの当該株式の本当の持ち主は誰なのか、子供の名義になっていますが本当の持ち主は亡くなった親であって当該株式が相続財産から漏れているのではないかというような調査を担います。
旧商法によれば、7人の株主が会社設立には必要でしたから、自分のほかに6人の株主を探すことが必要でした。それゆえ、奥さんや子供を、実際には出資していないにもかかわらず株主とし、会社の設立を行っていました。この場合、いわゆる名義株に該当します。会社が大きくなるにしたがい、各持株数も増加し、株式の価値も高まります。計画的に奥さんや子供への贈与を行ったり、株価が安い段階で買取らせたりして、贈与契約書や売買契約書を保管しているのであれば、名義株ではなく実質的に所有されている株式といえます。しかしながら、現実は、なかなかそのようにはなっていません。名義株として課税の対象とならないよう、適正に贈与申告をしたり、適正な売買価格での買取りを行ったりしなければなりません。
税務調査は、実際にどのようにして行われるのでしょうか。
会社の代表者が生前に奥さんや子供に、同族会社の株式を贈与したのであれば、当局に贈与の事実をどのように客観的に示すことになるのでしょうか。贈与税の申告をしておけばいいのでしょうか。贈与契約書をつくっておけばいいのでしょうか。贈与した金額が非課税額の範囲内なら、贈与税の申告をしていなくても贈与であると主張することができるのでしょうか。
さらに、贈与を受けた相続人のその時点での年齢も重要です。「30年前に株式を当時10歳の子供に贈与しました。それゆえ、名義株ではなくその子の株式です」といえば、通用するのでしょうか。当時大学生の子供と株式の売買契約書を作成した場合には、お金について、アルバイトで稼いだ、それとも、お父さん(被相続人)から借りたというのでしょうか。
親族間で財産の贈与や売買の事実があったことを、課税当局が納得できるよう説明するのは、大変困難であると思われます。贈与税の申告書も、子供(相続人)には秘密にしたままお父さん(被相続人)が書いて税務署に提出した可能性を否定することはできません。贈与契約書や売買契約書も、被相続人が一人で書いたものである可能性があります。公証人の面前で公正証書にしても、子供に贈与の認識又は売買するという真の意思があったと証明するのは大変困難です。
民法においては、贈与を受ける側の意思が重視されています。課税当局も、贈与を受ける意思・受諾があったか否か、また、財産権の移転を受けてその代金を支払うことを約するという事実が客観的に認められるか否かを判断基準にしていると思われます。課税当局が、適法に贈与・売買が行われたか否かの判断を行うことは、困難を伴うと思われます。
納税者側が適法に売買・贈与が行われたことを説明するためにできることは何かを考えてみます。株式の贈与を受けた場合は、贈与税の申告書を提出することが重要です。ただし、提出するだけではなく、その贈与税の申告書を、贈与してくれた人(お父さん等)が亡くなって税務調査が終了するまで、なくすことなく持っているようにしましょう。税務署の申告書の保管期限は7年間ですので、あなたが保管していなければ、申告した事実を証明する手段がないという事態に陥りかねないのです。株式の売買をした場合は、支払ったお金の流れを預金通帳等によって明確にし、売買契約書を締結するようにしましょう。売買契約書も保管しておく必要があります。それらを基に、当局には丁寧な説明を行って、理解を求めることが大切です。
(3)資料調査第三課
資料情報事務を担います。他の税務調査に有益であるような資料の収集を担います。もともと、税務調査の際に調査官が使える取引資料を収集することが、資料調査課の大きな役割となっています。
毎年1月末が提出期限となっている法定調書の提出を法人が求められることがあります。その資料をまとめるのが資料調査第三課です。また、法定資料以外に、税務調査のときに調査官が収集する仕入れ・外注費・交際費等の資料の取りまとめを行います。
(4)資料調査第四課
外国人の個人所得税の調査を担います。日本国内に住む外国人は数多く存在します。外国人の税金はどうなっているのかが気にかかる方もいると思われますが、資料調査第四課がきっちり課税しています。
(5)機動課
相続税事案の調査を担います。所得税や法人税の申告件数は税務署による大きな変動はありません。しかしながら、相続は所轄の税務署ごとに一定の割合で発生するものではありませんので、相続税の申告書の件数は、どの税務署でも年により増減があり、税務署によっても差があります。それゆえ、調査が必要な相続税事案の数が多い税務署に実査官が赴き、その税務署の調査官と協力して調査を行います。
2.課税第二部
続いて、課税第二部の資料調査各課が担う事務をみてみましょう。
(1)資料調査第一課
売上規模が100億円を超える大きな規模の法人であること等から税務署による調査が困難である
事案の法人税や消費税等の調査を担います。
(2)資料調査第二課
所属している実査官が、各税務署の調査官と協力して、合同で法人税や消費税等の調査を担いま
す。
(3)資料調査第三課
資料調査第一課が担当する法人よりも売上金額が多額であること等から税務署による調査が無理である法人の法人税や消費税等の調査を担います。一課と違うのは、税務署所管法人でありつつ売上金額が400~500億円以上もあるような法人が調査の対象となることです。また、大規模源泉徴収義務者や公益法人等の調査を担います。
この三つ以外の各課、個人課税課、資産課税課、法人課税課、消費税課は、税務署の各々の事務系
等の調査部門の主務課と呼ばれ、税務署の指導をする役割を果たしています。
国税局課税第二部の料調一課が調査に着手する前に行うことは、何かありますか?
売上が100億円を超える規模の大きな法人のうち、調査が難しい法人を担当する東京国税局課税第二部の料調(りょうちょう)一課。料調一課が調査に着手する前に行うことは、事案の選定と準備調査です。
法人税を担当する課税第二部の資料調査各課を、当局の職員は料調と呼んでいます。料調一課が調査をするのは、税務署が調査をしきれないような規模の大きい法人であるということが、まずいえます。資本金の額は1億円に満たないものの、売上の規模が通常100億円を超え、支店や営業所が各地にあって、海外に工場を有しているというような大法人です。そして、そのうちの特に調査が困難であると考えられる法人を選び、調査をしています。事案の選定とは、数多くの法人の中からそのような法人を選ぶことをいいます。
ベテランの実査官とその上司の主査が、その時点の経済情勢を勘案しつつ、好況業種や不正計算が内在している可能性のある業種等に着眼し、申告書や決算書を分析しながら、事案の選定をします。
事案が選定されたら、調査に着手するのですが、その前に準備調査を行います。大規模法人ですので、ぼんやりと全体を調査するのではなく、申告書の内容を徹底的に読んで分析をし、要調査項目をあぶり出します。その法人だけでなく、申告書に記載された取引先法人の申告状況を予め調べる等、取引先法人の事情も、予め調査します。
徹底的な準備調査を実施し、実際の調査を思い浮かべ、予想されるいろいろな状況をシミュレーションします。その後、当該事案の担当実査官は全員を呼び集め、準備調査の検討会を開催します。他の実査官からさまざまな質問が出て、準備調査の不備について指摘され、準備調査が終わります。
ここまで済んだら、調査のうちの半分ほどは終わったように感じられます。次に、調査に着手し、イメージ通りに行っていきます。
料調の実査官の努力を分かっていただけたのではないでしょうか。このような実査官が調査をすると、どうしてもかなわないのですから、常日頃、適正申告を心がけることが一番大切だと思われます。