税務調査において、税務署の調査官と社長の立場は、どのような関係にあるのでしょうか?

 

法人税法上、調査官と社長の立場は、権限と義務の関係にあります。ただし、これは、税務調査が円滑に実施されるためであって、上下関係にあるというわけではありません。

税務調査は法律上の手続きとして実施されるものであることから、拒否が可能なものではありません。したがって、調査官から調査の通知があれば、社長は税務調査を受ける義務があります。このことを、受忍義務(じゅにん)ぎむといいます(ただし、調査日程等については、お互いに都合のいい日に調整できるのはいうまでもありません)。このように、法人税法において、調査官と社長の立場は権限と義務の関係にあるといえますが、憲法下では、人としての立場、生存権等基本的人権は完全に平等ですので、税務署の調査官、会社の代表者、平社員といった立場の相違により差別されるということはあり得ません。しかしながら、法人税法の世界では、調査官と社長の立場は、権限を有する者と義務を負う者という関係になると心にとどめておきましょう。ただし、このような関係に係る規定は上下関係を決定付けるものではないことに留意が必要です。
それでは、このような関係が規定されているのはどうしてでしょうか。調査官の質問に法的根拠が存在しないなら、違法、不当な質問ということになってしまいます。そして、納税者に回答の義務が存在しないなら、社長や担当者は調査官の質問に必ずしも答えなくても構わないということになってしまうかもしれません。すると、国の根幹の一つといえる税務行政がスムーズに機能するのが困難な事態に陥ってしまうでしょう。このようなことから、受忍義務が規定されているというわけです。

このようなことを知れば、調査を受けることになっても、過度に不安になったり、不要な拒否反応を起こしたりすることもなくなるのではないでしょうか。税務調査は、法の規定するところに沿って実施されるものであり、調査官に対して事実関係を確実に説明するものです。このことを分かることが、税務調査を上手に正しく受けるための第一段階だといえます。
会社の代表者としては、取引の事実関係についての説明を、関係書類を基に淡々と行っていけばいいという覚悟も、社長であるあなたに芽生えてきたのではないでしょうか。

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