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税務署において、調査対象法人の選定と準備調査は、どのように行われるのでしょうか?

 

国の会計年度は4月に始まりますが、税務署では毎年7月に新しい事務年度が始まります。新メンバーが、その年のいろいろな事務を開始します。法人課税部門の調査事務も同様に開始されます。統括官は2月決算から申告書を見始め、売上金額・所得金額等について過去の申告書と比べつつ調査する法人を選定します。その後、調査官が調査対象期の申告書を過去の申告書と見比べながら問題点を探り出すといった準備調査を行います。

1.調査対象法人の選定
税務調査は、法人税調査事案であれ消費税調査事案であれ、同様の手続きにより行われます。
最初に、調査部門の統括官が2月決算の法人から申告書に目を通し始めます。2月決算法人については、4月末に申告書が提出され、当該申告書は資産課税部門や源泉所得税部門を経由し、6月半ばに法人課税部門に届けられます。7月に事務年度が始まりますので、時期的な関係で2月決算の法人から申告書に目を通し始めることになるのです。
売上金額や所得金額、販売費や一般管理費の内容について、過去の申告書と比較しつつ、調査の対象とする法人を選んでいきます。このことを、調査法人の選定事務と呼びます。選定の際には、国税総合管理(KSK)システムによって打ち出しされた選定支援のための計表が有益で活躍します。「国税庁レポート2009」には、KSKシステムに関する次のような記載があります。

参考 KSKシステム
KSKシステムは、全国の国税局・沖縄国税事務所と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することにより、国税債権などを一元的に管理するとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピューターシステムです。
平成2年から本格的な開発を開始し、平成7年以降、順次導入を進め、平成13年からは全国での運用を開始しています。
出典:国税庁「国税庁レポート2009」、2009年、33頁。

KSKシステムで作成された計表により、過去5年程度の主な損益科目・貸借科目の数字を知ることができ、売上総利益率や棚卸回転率等の各種指標が提示されています。それらの指標に異常数値が見られた場合には、調査時のポイントはそこであるということになります。それらの数値を見つつ、統括官が五感を働かせて、調査対象法人の選定を行います。
税務調査は、事案の選定が全てであるといっても過言ではありません。選定から全てのことが始まります。ちなみに、調査対象として選定された法人のことをその申告書も含めて事案というしきたりが存在します。
なお、統括官は、自分自身で調査に出向く場合もありますが、通常は部下に事案を渡して調査するよう指示を出すことになります。このことを、事案を指令すると呼びます。

2.準備調査
調査官は、統括官から指令を受け、調査対象期の申告書を、その前期・前々期の申告書と比較しつつ、問題点を探り当てていきます。具体的には、売上の伸びに比べて所得の伸びが低調である、売上はそれほど伸びていないにもかかわらず外注費の伸び方が異常である、巨額の特別損失を計上しているのに内訳書に内容の記載が見られないといった不審点をあぶり出していきます。このような作業のことを、準備調査と呼びます。
準備調査の手法については、業種業態によりいろいろな方法が挙げられます。バーやクラブといった飲食業であれば、内観・外観等の現地確認を行います。実際にお客となって入店し、内部の状況を見つつ、問題点はないかをさりげなく探ることを、内観調査と呼びます。小売店等であれば、実際に販売されている商品を購入する等して、レジを打っているか否か、どのように現金管理をしているか等について、お店の外観・内観の調査を行います。
このようにしてあぶり出された問題点を統括官に報告し、統括官から具体的な指示を受けることになります。準備万端整い、調査官は調査展開のシミュレーションをこの時点で始めています。そして、調査対象法人に電話をかけます。
当局はここまで準備をしているのですから、経営者が平然としていられず、不正をしていないにもかかわらず不安な心境になるのは、当たり前です。

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