そもそも税務調査とは、何なのでしょうか?
税務調査は、課税当局と納税者の間の法律関係であるといえます。税務調査は、法人税法・所得税法といった法律に基づいて実施される調査であり、事実との相違点がないのかを検証していくプロセスです。
税務調査と聞くと、帳簿書類を見つつ一方的に行う税務調査官の質問に上手に返答できなかった社長がやむを得ず修正申告を行うといった暗いイメージが心に浮かぶ方も少なくないでしょう。
しかしながら、真実は全く異なっています。それなら、税務調査とは、いったい何なのでしょうか。税務調査は、税務当局と納税者の間の法律関係です。実際に、税務調査を行うに当たり、法人税法・所得税法等を基に議論がなされます。このような税法は、まさに法律です。すなわち、税務調査は次のプロセスで行われます。
1.職員が、質問検査権に基づき、取引の事実関係について納税者に質問します。
2.その分析結果が税法通達に適合するものであるか否かについて検討を行います。
3.検討した結果が法に沿っていないと判断される事柄について、修正申告を行うよう促します。
税務調査に係る規定を、法人税法の例でみてみましょう。
最初に、調査官の質問検査の権限については、法人税法第153条により、調査対象となった税務署又は国税局所轄の法人そのものに対する調査権限がある旨が定められています。さらに、当該法人の取引先に対しても当該法人との取引に係る調査いわゆる反面調査をする権限がある旨が定められた規定が、第154条です。そして、税務署の調査官は、所属する税務署の所轄区域外にある当該納税者の本店・支店・工場・営業所に対しても、その区域を管轄する税務署に委任することにより、調査を行うことが可能であり、このことは第155条により規定されています。また、税務調査は刑事手続きではなく行政手続きとして実施される旨が規定されているのが、第156条です。
一方、納税者はどのような立場であるといえるのでしょうか。法人税法第162条により、調査官の質問に答えなかったり、偽りの答弁をしたり、真実でない帳簿を提出したりした納税者は、1年以下の懲役又は20万円の罰金に処する旨が定められています。ただし、この条文の適用を受けるのは、告発されて裁判を受け、有罪になるといった極端なケースであり、調査中にはずみでちょっとした偽りの言葉を述べたようなケースにも適用を受けるというわけではありません。