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税務署はどのようなところなのかについて教えてください。

 

国税庁は、財務省内の組織の一つです。そして、国税局・税務署は、国税庁の下部組織です。

日本は法治国家ですので、あらゆることが法令の規定に沿って行われます。したがって、税務署の組織も、法令に沿ってつくられています。具体的には、第一に、財務省設置法を基に設置されているのが財務省で、その中の組織の一つとして設置されているのが国税庁です。続いて、財務省組織令により国税庁の内部組織が規定され、国税局は国税庁の下部組織として設置されています。そして、財務省組織規則を基に地方支部部局として国税局・税務署が設置され、その内部組織が規定されています。

国税の組織の中で、私たちが最も身近に感じられるのは、税務署です。税務署の組織や所掌事務を説明します。

財務省組織規則第545条には、次のように税務署の所掌事務が規定されています。税務署は国税局の所掌事務のうち、次の事務を受け持っています。
・内国税の賦課(一定の金額の納税義務を課すこと)及び徴収に関すること
税務調査や未納の税金の徴収をします。
・税理士制度の運営に関すること
ニセ税理士の摘発を行います。また、脱税相談をした税理士を懲らしめます。
・酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関すること
・酒類に係る資源の有効な利用の確保に関すること
おいしいお酒をつくることができるよう酒造業の監督をしたり、日本酒に関して金賞・銀賞等の格付けをしたりします。そして、酒造業者からお酒が出荷される際、そのお酒の分量に合わせて酒税の課税を行います。
・印紙の模造の取締りを行うこと
契約書に印紙を仮置きし、コピーを取る等の不正があったら、3倍の印紙代金の徴収をします。そして、印紙のカラーコピーを取ったりすれば模造ということになります。それらを取り締まります。
・税務署の所掌事務に係る国際協力に関すること
外国の税務当局から問い合わせ等があれば、租税条約に沿って、その国の税務行政に協力をします。
・前各号に掲げるもののほか、法律に基づき、税務署に属させられた事務

この所掌事務は、東京都内に位置するある税務署の組織に照らすと、次の通りです。
1.管理職
(1)署長
上記所掌事務に関わる総責任者であるといえます。税務署内で、最も高い地位にあって最も忙しい人です。
(2)副署長
署長を支え、税務署の事務の整理をする各事務系統の直接の責任者であるといえます。法人・個人・資産・管理運営・総務の仕事を事実上仕切る人です。ある程度の結論を出して、最終的には署長に判断してもらいます。
(3)特別国税調査官
大規模な会社であり、売上・所得金額も高額な納税者で、特に詳細な調査を要すると税務署長が指定する個人や法人に関わる調査等をします。
(4)特別国税徴収官
税金を徴収します。滞納の金額が高額で納付させるのが困難で、特に難しいと税務署長が指定する内国税の徴収や還付に関わる事務を担います。
2.総務課
(1)総務課長
税務署の所掌事務についての総合調整に関わることを担います。税務署の職員が働きやすいような職場環境をつくります。また、納税者とのトラブルや苦情等に対応をします。税務署長の仕事の段取りや日程調整も行います。
(2)税務広報広聴官
広報や広聴に関わることを担います。確定申告をPRする、イータックスの普及活動を行う等、対外的な仕事をします。
(3)税理士専門官
税理士制度の運営に関わることを担います。税理士は、税理士法に沿って申告書の作成、納税相談等をすることにより、事実上国税の仕事の一端を担っています。この税理士を守ると同時に、税理士資格がないにもかかわらず税理士業務をするようなニセ税理士の取締りを行います。
3.管理運営部門
(1)統括国税徴収官
内国税の徴収・還付等に関わる事務を管理します。申告書の収受、税務相談、納税証明書の発行といった内部事務を一元的に担います。
4.徴収部門
(1)統括国税徴収官
内国税の滞納処分に関わる事務を担います。そのために必要である調査・検査や納税の猶予に関わる事務を管理します。
5.個人課税部門
(1)統括国税調査官
所得税等の賦課に関わる事務を担います。数部門に分かれ、スムーズに確定申告の相談納付を行い、個人の所得税の税務調査も実施します。
(2)情報技術専門官
上記の統括国税調査官部門の税務調査を支えます。IT関係に明るく、パソコン内のメールやフォルダ等の記載事項を調査したり、会計ソフトの分析等を行ったりして、調査を支えます。
(3)国際税務専門官
上記の統括国税調査官部門の税務調査を支えます。海外取引関係に明るく、納税者による事業関連の海外取引について調査をし、支えます。
(4)審理専門官
税法や通達に相当明るく、他の調査官からの質問や調査で調査官がなかなか判断できないとき、いろいろなことを教えます。また、納税者からのさまざまな相談に関して、税法における取り扱い等の審理をします。調査終了後の決議書について、最終的なチェックをします。
6.資産課税部門
(1)統括国税調査官
相続税・贈与税・譲渡所得税の税務調査をします。個人課税部門と同じように数部門に分かれ、スムーズに資産税に関わる確定申告の相談納付をします。
(2)国際税務専門官
仕事は個人課税部門の国際税務専門官と同じ内容なのですが、もっぱら資産税に関わる調査を支援します。
(3)審理専門官
仕事は個人課税部門の審理専門官と同じ内容なのですが、もっぱら資産課税に関わる各種相談を担当します。
7.法人課税部門
(1)統括国税調査官
法人税等の賦課に関わる事務のうちで、法人税等に係る課税標準又は税額の決定についての事務の管理及び法人税等の課税標準の調査に関わることを担います。消費税の賦課に関わる事務のうちで、消費税に係る課税標準又は税額の決定についての事務の調整を行います。つまり、法人が申告を行った法人税や消費税の額が正しいかどうかを調査し、誤りがある場合は訂正するよう調査等を通じて指導をしています。個人課税部門と同じように数部門に分かれ、法人税に関わる税務調査を行います。
(2)情報技術専門官
仕事は個人課税部門の情報技術専門官と同じ内容なのですが、法人税に関わる事務を担います。
(3)国際税務専門官
仕事は個人課税部門の国際税務専門官と同じ内容なのですが、法人税に関わる事務を担います。
(4)審理専門官
仕事は個人課税部門の審理専門官と同じ内容なのですが、法人税に関わる事務を担います。
8.特別調査情報官
その存在が複数の税務署に及んでいる同族グループ法人の調査に関わる企画立案を行い、各々の税
務署の調査官の調査を指揮し、調整して、最終的な取りまとめを行う事務を担います。
(1)酒類指導官
酒税の賦課に関わる事務のうちで、酒税に係る課税標準又は税額の決定についての事務の管理に関わることを担います。酒税の課税標準の調査並びに酒税についての調査及び反則の取締りに関わることを担います。つまり、新たに小売店を開設するための免許や幕張メッセでお酒を一時的に販売する免許等のお酒に関わる各種免許を付与します。そして、最近はあまり耳にしませんが、密造酒の取締り等も担います。
(2)酒類業調整官
酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関わることを担います。酒類に係る資源の有効
な利用の確保に関わることを担います。おいしいお酒をつくることができるよう、酒造業の監督を
実際に行います。
(3)納税者支援調整官
税務一般についての納税者からの苦情に関わる事務のうちで、当該納税者が適正かつ円滑に納税
義務を履行するために必要な助言及び教示並びに調整に関わる事務を処理します。納税者の観点か
ら納税者の意見をききますが、調査事案を納税者に有利なようにまとめるのではありません。

最後に、上記3の管理運営部門の役割について説明します。
管理運営部門は平成21年7月に新設され、以前は管理部門と呼ばれていました。納税証明の発行
や納付済みの税金の管理、つまり、納税者は誰で、何の税目の税金がいくら納付されたのかといったことを確認し、日銀歳入額のチェックを行う等の役割を担当していました。
しかしながら、税務署を訪れる納税者の利便性の向上を目指し、当局は、法人税・申告所得税といった税別に行なっていた納税証明等の事務を、一元化しました。内部事務の一元化はその前からいくつかの税務署において試行的に行われていましたが、平成21年7月からは管理運営部門がその役割を担当することになったわけです。それゆえ、各々の税務署に総合窓口が置かれ、納税証明・諸申請・各種申告相談等の一元的な事務処理をすることとなりました。待合室が税務署の1階に設置され、受付が済むと番号表が渡されて、順番に呼ばれることになります。市役所の市民課を思い浮かべてもらうといいと考えられます。

東京局を例に取ると、通常一つの税務署に1~4部門の管理運営部門が設置されています。大規模な署なら5部門、最大で6部門が設置されています。1部門は、旧来の管理部門の業務と管理運営部門全体を取りまとめます。 2~4部門については、管理者たる統括官は法人課税部門・旧管理部門・個人課税部門からそれぞれ配置換えとなっているのですが、各部門の業務内容は厳密に区分されるわけではなく、全体的に一体運営を行います。配置されている職員のほとんどが新人で、事務系統には関係なく、税目横断的に法人税・所得税等の申告書の各数値や各税目に関わる諸申請等を審査した上、国税総合管理(KSK)システムに入力をします。また、かつて税目部門ごとに納税証明を発行していたのに対し、ワンストップで納税証明の発行を行っています。

税務署は準備調査を終えた後、どのようなことを行うのでしょうか?

 

税務署は準備調査を終えた後、実地調査・帳簿調査を行い、帳簿調査によって問題点が見つかった場合には反面調査を実施します。そして、問題点が何かあったときには、調査官は修正申告を提出するよう促します。

1.実地調査
準備調査は机上で行われますが、実地調査とは実際に法人に出向いて行う調査をいいます。
まず、代表者との面接を行い、会社の概要を聴取します。具体的には、会社の業務内容、会社の歴史、代表者の経歴、売上の計上方法、外注の決済方法等について、詳細に聞き取ります。
このような概況の聞き取りは、調査官にとって、一連の調査事務のうち最も大切な手続きであるといえます。概況をきちんと聞き取って会社の状況を理解しておかなければ、後に帳簿調査を行って疑問点が生まれても、もはや社長に聞けないということになりかねません。
納税者側は、質問事項について、誠意を持ち、ありのままを伝えることが重要です。作為的な説明をすると、後で矛盾が発覚しますし、このようなことをする必要は全くないといえます。誤解されないような丁寧な説明が、結果的には一番適切です。
調査官の質問検査は尋問ではないことから、受け答え時の納税者の表情から何かを洞察するといったことは通常考えられません。ただし、社長自身が売上を除外しているといった後ろめたいことを隠していると、おのずと表情に表れ、落ち着かない気持ちになります。ベテランの調査官なら、社長の動作から感じ取るものがあり、何気なく探りを入れ、見抜いていくことになります。このような事態を避けるために、日頃から適正申告を心がけることが、税務調査の正しく上手な受け方であるといえます。
調査官は、このようにして会社の概況を聞き取った後、帳簿調査を行います。

2.帳簿調査
帳簿調査とは、会社の元帳に計上されている各勘定科目の金額・内容を請求書・領収書と照らし合わせて調査することです。最も新しい決算期から目を通し、5期分さかのぼって調査します(5期分の調査を行うことについては、平成16年改正税法の附則に定めるところによるものです)。売上計上が適切か否かについては、売上の請求書の控えと売上帳の突合(とつごう)や、領収書の控えと入金額との突合により調査します。そして、不突合(ふとつごう)があれば、いわゆる売上除外が考えられます。仕入れや外注費に関しても、取引先からの請求書と仕入帳・買掛金台帳との突合を同じように行います。

3.反面調査
帳簿調査により問題点が見つかった場合については、仮に売上が計上されていないとしたら、相手先の会社に対して反面調査を行い、事実関係を確認します。
そして、本当に漏れているのであれば、決済方法の確認を行い、個人口座や簿外預金への振込み、小切手なら簿外口座での取り立て等を把握するよう努めます。具体的には、第一に取引先の法人に臨み、支払方法が振込み・小切手・手形のいずれによるものなのかを確認します。
振込みなら振込先の銀行にも臨み、その口座の入金内容を調査し、口座の名義人について、社長の個人名義の口座なのか、又は法人名義の口座でも法人の帳簿に記載のないいわゆる簿外口座なのかを、鋭く明らかにしていきます。これは、銀行調査と呼ばれます。
また、当該口座からの出金に関しても、銀行の出金伝票を調査し、振込出金ならその銀行に出向いて調べます。こうして不正計算が全体的に解明されていきます。
仮に反面調査を受けることになったとしたら、どうすればいいでしょうか。当局の捜査官への力添えが最も重要であるといえます。反面調査の拒否や非協力的な態度は、相手の不正計算に力を貸したと判断され、近い将来、自らが調査を受けることにつながります。このような事態を回避するためには、当局の反面調査に力添えするといいでしょう。

4.調査結果
問題点が何かあった場合には、調査官は修正申告の提出を求めます。このことを、修正申告を慫慂(しょうよう)すると呼びます。税務署から指摘のあった問題点に、納税者側が納得できず、修正申告の提出を拒否したときには、税務署により更正という行政処分が行われます。これに対して納税者側が納得できないなら、まず調査を行った当該課税庁に対する異議申立ての手続きをし、そこでなされた決定に不服があれば、国税不服審判所に不服申立てを行います。それでもなお納得できないなら、裁判に訴えます。
このような事態にならずに税務調査を終わらせることが大切なのですが、問題となっている案件に関して、どうしても考え方が一致せずに、国税不服審判所や裁判所に判断してもらおうと、不服申立てを行う場合があります。また、調査官の態度に満足できない、説得力のある説明がないといったことから、「修正申告を提出したくない。更正してくれ」と主張し、税務署長に対して異議申立てを行う例もあるようです。
修正申告書の提出については、最終期のみの修正でいい場合も、過去の事業年度にさかのぼる場合もあります。通常は最もさかのぼって5期ですが、不正計算があったときには7期さかのぼります。

税務署において、調査対象法人の選定と準備調査は、どのように行われるのでしょうか?

 

国の会計年度は4月に始まりますが、税務署では毎年7月に新しい事務年度が始まります。新メンバーが、その年のいろいろな事務を開始します。法人課税部門の調査事務も同様に開始されます。統括官は2月決算から申告書を見始め、売上金額・所得金額等について過去の申告書と比べつつ調査する法人を選定します。その後、調査官が調査対象期の申告書を過去の申告書と見比べながら問題点を探り出すといった準備調査を行います。

1.調査対象法人の選定
税務調査は、法人税調査事案であれ消費税調査事案であれ、同様の手続きにより行われます。
最初に、調査部門の統括官が2月決算の法人から申告書に目を通し始めます。2月決算法人については、4月末に申告書が提出され、当該申告書は資産課税部門や源泉所得税部門を経由し、6月半ばに法人課税部門に届けられます。7月に事務年度が始まりますので、時期的な関係で2月決算の法人から申告書に目を通し始めることになるのです。
売上金額や所得金額、販売費や一般管理費の内容について、過去の申告書と比較しつつ、調査の対象とする法人を選んでいきます。このことを、調査法人の選定事務と呼びます。選定の際には、国税総合管理(KSK)システムによって打ち出しされた選定支援のための計表が有益で活躍します。「国税庁レポート2009」には、KSKシステムに関する次のような記載があります。

参考 KSKシステム
KSKシステムは、全国の国税局・沖縄国税事務所と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することにより、国税債権などを一元的に管理するとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピューターシステムです。
平成2年から本格的な開発を開始し、平成7年以降、順次導入を進め、平成13年からは全国での運用を開始しています。
出典:国税庁「国税庁レポート2009」、2009年、33頁。

KSKシステムで作成された計表により、過去5年程度の主な損益科目・貸借科目の数字を知ることができ、売上総利益率や棚卸回転率等の各種指標が提示されています。それらの指標に異常数値が見られた場合には、調査時のポイントはそこであるということになります。それらの数値を見つつ、統括官が五感を働かせて、調査対象法人の選定を行います。
税務調査は、事案の選定が全てであるといっても過言ではありません。選定から全てのことが始まります。ちなみに、調査対象として選定された法人のことをその申告書も含めて事案というしきたりが存在します。
なお、統括官は、自分自身で調査に出向く場合もありますが、通常は部下に事案を渡して調査するよう指示を出すことになります。このことを、事案を指令すると呼びます。

2.準備調査
調査官は、統括官から指令を受け、調査対象期の申告書を、その前期・前々期の申告書と比較しつつ、問題点を探り当てていきます。具体的には、売上の伸びに比べて所得の伸びが低調である、売上はそれほど伸びていないにもかかわらず外注費の伸び方が異常である、巨額の特別損失を計上しているのに内訳書に内容の記載が見られないといった不審点をあぶり出していきます。このような作業のことを、準備調査と呼びます。
準備調査の手法については、業種業態によりいろいろな方法が挙げられます。バーやクラブといった飲食業であれば、内観・外観等の現地確認を行います。実際にお客となって入店し、内部の状況を見つつ、問題点はないかをさりげなく探ることを、内観調査と呼びます。小売店等であれば、実際に販売されている商品を購入する等して、レジを打っているか否か、どのように現金管理をしているか等について、お店の外観・内観の調査を行います。
このようにしてあぶり出された問題点を統括官に報告し、統括官から具体的な指示を受けることになります。準備万端整い、調査官は調査展開のシミュレーションをこの時点で始めています。そして、調査対象法人に電話をかけます。
当局はここまで準備をしているのですから、経営者が平然としていられず、不正をしていないにもかかわらず不安な心境になるのは、当たり前です。

税務調査において、税務署の調査官と社長の立場は、どのような関係にあるのでしょうか?

 

法人税法上、調査官と社長の立場は、権限と義務の関係にあります。ただし、これは、税務調査が円滑に実施されるためであって、上下関係にあるというわけではありません。

税務調査は法律上の手続きとして実施されるものであることから、拒否が可能なものではありません。したがって、調査官から調査の通知があれば、社長は税務調査を受ける義務があります。このことを、受忍義務(じゅにん)ぎむといいます(ただし、調査日程等については、お互いに都合のいい日に調整できるのはいうまでもありません)。このように、法人税法において、調査官と社長の立場は権限と義務の関係にあるといえますが、憲法下では、人としての立場、生存権等基本的人権は完全に平等ですので、税務署の調査官、会社の代表者、平社員といった立場の相違により差別されるということはあり得ません。しかしながら、法人税法の世界では、調査官と社長の立場は、権限を有する者と義務を負う者という関係になると心にとどめておきましょう。ただし、このような関係に係る規定は上下関係を決定付けるものではないことに留意が必要です。
それでは、このような関係が規定されているのはどうしてでしょうか。調査官の質問に法的根拠が存在しないなら、違法、不当な質問ということになってしまいます。そして、納税者に回答の義務が存在しないなら、社長や担当者は調査官の質問に必ずしも答えなくても構わないということになってしまうかもしれません。すると、国の根幹の一つといえる税務行政がスムーズに機能するのが困難な事態に陥ってしまうでしょう。このようなことから、受忍義務が規定されているというわけです。

このようなことを知れば、調査を受けることになっても、過度に不安になったり、不要な拒否反応を起こしたりすることもなくなるのではないでしょうか。税務調査は、法の規定するところに沿って実施されるものであり、調査官に対して事実関係を確実に説明するものです。このことを分かることが、税務調査を上手に正しく受けるための第一段階だといえます。
会社の代表者としては、取引の事実関係についての説明を、関係書類を基に淡々と行っていけばいいという覚悟も、社長であるあなたに芽生えてきたのではないでしょうか。

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